しかし、ここで取り上げるのは低血糖についてです。
血糖は高いのはもちろん問題となるのですが、低いのも問題なのです。生体もバランスをとって状態を維持しているわけで、高すぎるのも低すぎるのも問題となります。何事もほどほどという事です。
そこで今回は、最近問題視されている高血糖を抑えすぎた長期間の低血糖状態について治療薬からの取り組みについて説明します。
低血糖に対する最近の取り組みは?
近年、低血糖を起こしにくい薬としてDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬が登場しました。しかも、以前の薬に比べ体重を増やさないという特徴があります。さらに、認知機能の低下も防ぐことが期待されているのです。特にGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は逆に体重を減らす効果もあります。また、SGLT2阻害薬は心不全の改善や心臓血管系の死亡を減らすことが報告され、GLP-1受容体作動薬は心筋梗塞や脳卒中などの心血管系の合併症を減らすようです。
このため、従来のSU薬やビグアナイド薬からこれらの薬剤への変更が行われているようですね。
さらに、週に1回だけの内服としてのDPP-4阻害薬や、注射ではGLP-1受容体作動薬注射が登場しているようです。
SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の大半は1日1回の服用なので、飲み忘れも少ないし、飲むことへの心的な負担の軽減も得られるようです。
ただし、糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法です。それに加えて薬物療法なので、安易に薬に頼らず、基本の食事と運動を心がけることが大切です。
低血糖はなぜ問題か?
低血糖を繰り返すと自覚力が低下する
通常であれば低血糖の症状として、動悸(胸がドキドキする)や冷や汗、ふるえ、頭痛や倦怠感などが自覚されます。しかし、低血糖を繰り返すとこれらの低血糖症状が自覚されないようになるのです。特に高齢者の場合は自覚しにくいようです(無自覚性低血糖)。そのため、動けない状態にまで血糖が下がり、意識消失状態になることがあるようです。しかも、糖尿による低血糖症状だけではなく、他の原因による自律神経性の動悸や冷や汗などの自覚も低下しているような印象を持っています。
糖尿病の場合、基本的に高い血糖を下げるためにインスリンや内服薬でコントロールされている場合が多いと思います。薬の作用により血糖が上がりにくくなっているわけですから、より低血糖に注意する必要がでてくるわけです。
実際に、インスリンやスSU薬などの強い血糖降下作用薬を使う場合、70mg/dL以下の低血糖にまで血糖が低下することがあり、狭心症や心筋梗塞の誘因となることがあります。
低血糖が起こっているかを知る方法
低血糖が起こっているかどうかは、従来は検査をしないと分かりませんでした。しかし、近年は持続的に血糖値の変動を記録する方法があるのです。それが、「持続血糖モニタリング(CGM)」と呼ばれる装置です。この装置は14日間の血糖を連続して、測定・記録可能な装置です。
糖尿病の血糖コントロールは安心した生活を送るためには必要不可欠ですが、高血糖や低血糖があっても、自覚症状が乏しい方の場合、日々の生活で低血糖の有無や血糖の変動を知ることは困難です。このCGMを使う事によって、これまで自己血糖測定では発見しにくかった、夜間や早朝の低血糖などの血糖の上下動を知ることができるようになったのです。
さらに、「フラッシュグルコースモニタリング(FGM)」と呼ばれる、リアルタイムで皮下間質液中のグルコース濃度を測定・表示する装置が登場しています。
ただ、間質液中のグルコース濃度なので血液中の血糖を直接反映したものではなく血液中の血糖の上下動が約10分遅れで現れるという、注意点はあります。
リンク
POINT
低血糖も問題。無自覚性低血糖という問題について解説しました。
低血糖にも対応可能な新しい薬3種を紹介しました。
低血糖を知ることができる装置2種を紹介しました。
低血糖にも対応可能な新しい薬3種を紹介しました。
低血糖を知ることができる装置2種を紹介しました。