「変な話だけど・・・、陰部がとても痒いんだって。糖尿病と関係があるのかな?」
「痒みって、とても辛いですよね。特に陰部だと相談しにくいし。確かに糖尿病の方で掻痒感が強くなることはありますよ。詳しく見てみましょう。」
なぜなら、糖尿病は血糖値が高くなることで、白血球や免疫細胞の機能低下が起こり、病原菌の感染を許してしまうからです。
さらに、糖尿病の血流障害や人工透析などで感染を重症化させる可能性が高まります。
記事を読み終えると、糖尿病と感染についての知識を深め早期発見、早期治療に役立ちます。
陰部の痒みは糖尿病の「血管障害」が原因
糖尿病の合併症は「血管障害」と「神経障害」に大別されます。
なかでも、「血管障害」は、皮膚のかゆみと視力低下です。
皮膚のかゆみは、我慢できないほど激しく、全身に渡ることもありますが、陰部周辺が痒くなることが多いのが特徴です。
ちなみに、「神経障害」は、新聞の文字がぼやけたり(視力低下)、目の疲れや物が二重に見えるなどがあります。
糖尿病は白血球や免疫にかかわる細胞の機能低下が起こる
糖尿病では、神経障害により感覚が鈍くなったり、血管障害で血流が滞ることから、からだの隅々に栄養が行き渡らなくなり皮膚組織の感染に対する抵抗力が弱くなることで感染症を引き起こします。
糖尿病では高血糖になった血液に対して、身体の細胞の水分を血液に移動させることで薄めようとします。
そのため細胞は水分不足の状態となり、皮脂が減少して皮膚が乾燥した状態になります。
皮膚が乾燥すると、掻いてしまうことで引っ掻き傷ができ、更にそこから感染することもあります。
糖尿病による痒みであれば、血糖コントロールにより血糖値が下がると痒みも治まります。
しかし、感染症を併発している場合は、軟膏などの外用薬が必要となります。
糖尿病は感染症にかかりやすい
糖尿病の方は、尿路感染症や呼吸器感染症、胆道感染症にかかりやすく、他にも皮膚の感染症や歯の歯周病にもかかりやすくなります。
特に、膀胱炎や急性腎盂腎炎が代表例の尿路感染症は最も罹患頻度が多い感染症です。
さらに、糖尿病で神経障害を合併していると排尿がうまくできず尿が溜まった状態となる(=神経因性膀胱)ため、尿路感染症を起こしやすくなります。
血糖コントロールが悪いと、細菌や真菌に抵抗できず重症化になりやすい傾向があります。
女性の外陰部(女性性器)のかゆみの原因は?
糖尿病での痒みは外陰部のみのかゆみが特徴です。
中には、我慢できないほど激しい痒みとなることがあります。
糖尿病の場合は尿に糖質を多く含んでいることもあり、免疫機能が低下していることからカンジダ菌などの菌の繁殖を抑えられず、強い痒みを引き起こします。
また、糖尿病の治療中でも最近の治療薬SGLT2阻害薬は糖分を尿中に排出するために、カンジダ膣外陰炎を起こしやすくなります。
カンジダ膣外陰炎:デリケートゾーンの痒みを引き起こす病原菌で最も頻度の高い原因は、カンジダ菌(カビの一種)です。75%の女性が生涯で少なくとも1回は罹るといわれています。10~30%の女性の膣内にカンジダ菌は常在しているといわれ、風邪や睡眠不足などの体調不良時に発症(日和見感染)したり、抗生物質の内服後に発症することもあります。
また、糖尿病の場合、治療薬の副作用に痒みを生じるものがあります。
陰部の痒みの原因はいろいろ
肝臓病や腎臓病が原因でも外陰部に痒みが生じることもありますが、全身に痒みがでるため、痒みの原因を考える際に参考になります。
肝機能に障害が出ると、胆汁の流れが滞ることで血液中に排出されてしまいます。これが血中胆汁酸の上昇を引き起こし痒みが起こります。血液中に排出されるため全身に症状が出るのです。
一方、肝臓の障害ではオピオイドなる物質が痒みの原因と考えられています。この場合、脳が痒みを感じているので、一般的なヒスタミンによって生じる痒みとは異なります。もちろん、かゆみ止めの一般的な抗ヒスタミン薬は効かないということになります。
ちなみに、この場合は飲み薬(ナルフラフィン塩酸塩)により、オピオイドに対して作用し、鎮静化させ元のバランスに戻します。
また、ビタミンB2の不足でも外陰部の発赤や痒みを生じることがあります。この場合、口唇や口角のびらんを伴うことが多いようです。
女性の場合、経験することが多いカンジダ膣外陰炎でも、デリケートゾーン(尿道から肛門にかけての外陰部全体)の不快症状、特に「痒み」を引き起こします。他にも、初経後の帯下(おりもの)の増える排卵期や月経中の経血によるムレによる雑菌の繁殖による痒み、ナプキンによるかぶれ、下着の刺激なども考えられます。一方で、閉経後にも女性ホルモンが低下することで膣内のデーデルライン桿菌が減り、膣内の感染症が起こりやすい状態になります。女性ホルモンが低下すると慢性の炎症が持続し、膣の粘膜が萎縮してしまう萎縮性膣炎の頻度も高いようです。高齢者での尿漏れによる尿漏れパットによるかぶれもデリケートゾーンの痒みの原因の一つです。
糖尿病で外陰部の痒みが生じる
糖尿病により皮膚の乾燥から痒みを生じることがあります。その場合、かなり激しい痒みで外陰部に生じることが多いようです。免疫機能が低下していることが原因ですが、感染症を伴っていなければ血糖コントロールにより治まります。
しかし、糖尿病の場合は感染症にもなりやすいため、血糖コントロールだけでは痒みは収まらず、感染症に対する治療も必要となるでしょう。
まとめ
痒みは日常的に誰でも経験します。痛みなどであれば危険信号として病気を疑うこともあるでしょう。しかし、痒みは、それが病気によるものであるとか、薬によるものであるとか考えにくいものです。しかも、デリケートゾーンであればなおさら相談しにくいと考えます。
しかし、痒みは痛みと同様、身体の異変を教えてくれる大切な信号ととらえ、病気の早期発見、早期治療につながることを願います。
・糖尿病による直接的関与と間接的関与がある。
・外陰部の痒みの原因には糖尿病以外にもある。
・痒みは痛みと同様、生体からの危険信号である。
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